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「いただきます」を未来へ。

下鴨茶寮とのご縁が始まってから、十年以上の時が流れました。
その間、“食”という文化が持つ力を、さまざまな場面であらためて実感しています。
2025年の大阪・関西万博では、テーマ事業「EARTH MART」を担当し、“いのちをいただく”という行為が、どれほど尊く、未来に向けて大切なものなのかを、多くの来場者と共に考える機会に恵まれました。
会場で耳にした「いただきます」の声は、単なる習慣ではなく、いのちと向き合う姿勢そのものだったように思います。
その声に触れたとき、私はふと下鴨茶寮の原点を思い出しました。

この地で170年受け継がれてきた「食は祈り」という精神。
下鴨神社の御用達包丁人として歩み始めた料亭は、食をつくる場であると同時に、いのちに向き合う“こころの場所”でもあったのだと。
料理とは、誰かの一日を支える行いであり、その人の記憶にそっと置いていく「時間の贈り物」でもあります。
だからこそ、私はこの料亭を、文化が響きあい、人がつながる“舞台”にしたいと思いました。

過去の知恵を混ぜ合わせるのではなく、やさしく“和える”ことで未来へ手渡していく。
日本が長い時間をかけて育ててきた、この“和える文化”こそが、世界と交わるための懸け橋になると信じています。
下鴨茶寮が、そんな「和える場所」であり続けること。
そして「いただきます」の精神を、静かに、やさしく、次の世代へ届けていくこと。
それが、私がこの暖簾を担うと決めたときに胸に宿った想いです。

これからも、「いただきます」の心とともに、下鴨茶寮の暖簾を未来へつないでいきたいと思います。



小山 薫堂(こやま くんどう)
下鴨茶寮 主人

1964年6月23日 熊本県天草市生まれ。放送作家、脚本家。 日本大学芸術学部放送学科在籍中に放送作家としての活動を開始。「料理の鉄人」「カノッサの屈辱」など斬新なテレビ番組を数多く企画。 2008年、初の映画脚本「おくりびと」で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得した。 テレビ、ラジオ、映画、エッセイ連載、作詞など幅広く活動する他、京都館館長(京都市)、京都芸術大学副学長、経済産業省、農林水産省、文化庁など多くの政府・地域・企業のアドバイザー等を務める。故郷である熊本県では地域プロジェクトアドバイザーを務め、人気キャラクターくまモンの生みの親でもある。2025年開催の「大阪・関西万博」のテーマ事業プロデューサーを務める。