毎年のお正月に用意するおせち。家族の好みや、集まる人数を思い浮かべながら、新しい年を迎えるひと重を選ぶ。その時間も、年の瀬の大切な支度のひとつです。
おせちの始まりにある「神に供える料理」と、下鴨神社の神饌を担う「御用達包丁人」としての仕事。そのつながりから、下鴨茶寮のおせちをご紹介します。
神に供える料理から始まった
和おせち 三段「未」干支陶器付(4~5人前)
おせちの語源は、平安時代の宮中行事「節会(せちえ)」に供された「御節供(おせちく)」にさかのぼるとされています。季節の節目に、その時季の食材を用いた料理を神に供える。おせちの始まりには、感謝と祈りを料理に託す営みがありました。
やがて節句の祝いが民間にも広がり、なかでも一年の始まりを祝う正月の料理が、おせちと呼ばれるようになりました。
年神様をお迎えし、実りに感謝するとともに、家族の健やかな一年を願う。お正月の食卓には、そうした心が受け継がれています。
下鴨茶寮のおせち2027
神に供える料理を、今も担う料亭として

安政三年(1856年)創業の下鴨茶寮。本店は、世界遺産・下鴨神社のふもと、糺の森のほとりにあります。
当茶寮は、「下鴨神社御用達包丁人」として、深いご縁を紡いでまいりました。重要文化財である「供御所(くごしょ)」での調理を正式に許され、婚礼の料理を担うほか、神事にも携わっています。
総料理長・本山直隆(もとやま なおたか)が、年に数回仕立てる神事の料理。そこには、食材の切り方から並べ方、形式まで、厳格な決まりがあります。先人たちが伝えてきた様式に沿って整える仕事について、本山はこう語ります。
「先人たちが繋いできたこの様式を、自分の代で途切れさせてはいけない。その責任を強く感じています」
神事の後に、神前に供えたものをともにいただく「直会(なおらい)」。当茶寮は、その調理や作法を受け継ぐ役割も担っています。
おせちの始まりにも通じる営みに、今も料理人として携わっていること。それが、下鴨茶寮のおせちの背景にあります。
おせちには、作り手の想いが映る
和おせち 三段(4人前)
下鴨茶寮のおせちの「顔」として、最も多くのお客様にお選びいただいているのが、4人前の「和おせち 三段」です。三段のお重に、伝統的な縁起ものや京都らしい料理、料亭の逸品など、41品を詰めています。
本山は、おせちについて「一年に一回、お客様の最初の食卓を彩る特別なもの」と語ります。食材を選ぶ際にも大切にしているのは、そこに込められた願いや思い。家族の健やかさや豊かな実りを願う料理を取り合わせ、新年を祝う膳に仕立てます。
味付けは、出汁を効かせ、素材そのものの持ち味を生かして淡く。料亭で培ってきた料理の技を、ひと品一品に注いでいます。
その味と品質を安定してお届けするため、仕入れにも心を配ります。長年お付き合いのある仕入れ先とも連携し、年の早い時期から食材の確保を進めています。
蓋を開けたときの美しさも、大切にしている事のひとつです。料理には飾り切りを施し、盛り込みでは同じような色が隣り合わないよう、配置を整えます。一品の姿と、お重全体の彩り。その両方に目を配りながら、お正月らしい華やかさを形にしていきます。
毎年変わらぬ味を、ご案内した姿のまま、お客様のもとへ。ひとつ一つのお重を確かに仕立てる仕事が、新年の食卓を支えています。
関連記事:下鴨茶寮のおせち全品目縁起リスト~新年の言祝ぎ~
下鴨茶寮のおせちを、初めて囲まれる方へ

下鴨茶寮 総料理長 本山 直隆(もとやま なおたか)
1981年佐賀県生まれ。東京で日本料理の修業を重ね、2016年3月、「銀座 下鴨茶寮 東のはなれ」料理長、2017年6月「下鴨茶寮」総料理長に就任。
総料理長・本山直隆は、おせちに寄せる思いを、こう語ります。
おせちほど、人の幸せを祈る料理はほかにありません。おせちは『料理で人を幸せにする』と料理人を志した僕の原点です。一年の始まりをお祝いする膳のために、ご家庭にいながら背筋が伸びるような、ハレの日の料亭のおせちを心を込めてお届けします。
神に供える料理に託されてきた感謝と祈り。その心を大切に、新しい一年を迎えるご家族の幸せを願いながら、下鴨茶寮はおせちを仕立てています。
初めて当茶寮のおせちを囲まれる食卓にも、料理に込めた思いが届きますように。
関連記事:【総料理長インタビュー】創業 170年目の晴れ膳──「語り継ぐおせち」
下鴨茶寮のおせち2027
参考
下鴨神社(賀茂御祖神社) | 世界文化遺産
https://www.shimogamo-jinja.or.jp/
近代におけるおせち料理の形成と婦人雑誌『婦人之友』・『婦人画報』・『主婦の友』を中心に(山田慎也)

