味わいは、湯気のなかで深く

出汁とともに煮える野菜、さっとくぐらせる魚や肉、食材の旨みを受け取りながら深まっていく味わい。ひと口に「鍋」といっても、合わせる食材や出汁、食べ方によって、その表情はさまざまです。

下鴨茶寮が鍋を仕立てるうえで大切にしているのは、食材それぞれの持ち味を活かすこと。出汁を整え、素材に合わせて包丁を入れ、ご家庭で火にかけたときの仕上がりまでを思い描きます。鍋を囲み、食べ進め、その先の〆まで。一連の時間をひとつの料理として組み立てています。

魚介から肉まで、多彩な食材を取り合わせた「出汁しゃぶ」をはじめ、食卓を囲むひとときや贈りものとしても選ばれてきた料亭の鍋。今回は、その味わいを支える出汁と具材の仕立てを通して、下鴨茶寮の鍋づくりをご紹介します。

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京都の食の知恵を、ひと鍋に。

千年にわたり都が置かれた京都では、さまざまな料理文化が育まれてきました。海から離れた土地でありながら、各地から届く食材に手をかけ、その持ち味を余すことなく料理に生かす。そうした工夫も、京都の食文化を支えてきたもののひとつです。

京野菜をはじめ、豆腐や湯葉、魚介など、それぞれの食材を見極め、出汁とともに味わいを引き出していく。素材そのものを尊びながら、手をかけることでおいしさを深めていきます。

食材が出汁を含み、そこから生まれた旨みが、また鍋へと重なっていく。下鴨茶寮の鍋にも、そんな京都の料理に息づく知恵を映しています。


一つの鍋に、一つの出汁

主となる食材に合わせ、出汁の仕立てを変える。

主となる食材に合わせ、出汁の仕立てを変える。


日本料理において、出汁は料理の土台となるもの。強い味を加えるのではなく、食材がもつ甘みや香り、旨みを引き出し、一皿の調和を整えます。

鍋料理では、はじめは澄んでいた出汁に、魚介や肉、野菜の旨みが少しずつ溶け込み、食べ進めるほどに味わいを変えていきます。出汁が食材を引き立て、食材の持ち味を受け取る。その重なりによって、鍋全体の味わいが深まっていきます。

下鴨茶寮では、すべての鍋に同じ出汁を合わせるのではなく、主となる食材に応じて仕立てを変えています。繊細な甘みを生かすもの、豊かな脂を受け止めるもの、香りを重ねるもの。食材が最もよく映える味わいを見極め、出汁の濃さや香り、旨みの重なりを整えます。

最初のひと口から、その先に待つ〆まで。移ろいゆく味わいを支えているのが、それぞれの鍋のために仕立てた出汁です。

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食卓の仕上がりから、逆算する

火の入り方まで考え、包丁を入れる。

鍋のおいしさを支えているのは、出汁だけではありません。魚や肉、野菜をどのような厚さや大きさに整えるかによって、火の通り方も、出汁の含み方も変わります。

たとえば白菜は、やわらかな葉と厚みのある芯とで、火の入り方が異なる野菜です。下鴨茶寮では、芯まで無理なく火が通るよう、部位に応じて切り方を変えています。鍋の中でそれぞれが食べ頃を迎え、出汁とともにおいしく味わえるように。ひとつの野菜にも、細やかな手仕事を重ねます。

魚介や肉も、それぞれの身質や脂の具合を見ながら、出汁にくぐらせたときに持ち味が引き立つ形へ。食材ごとの性質を確かめ、火にかけた先の状態を思い描きながら、一つひとつ仕立てていきます。

料理人の手を離れたあと、ご家庭の鍋で一つの料理として整うこと。食卓で迎える食べ頃から逆算した仕込みが、料亭の鍋の味わいを支えています。


食材ごとに広がる、鍋の愉しみ

下鴨茶寮の鍋には、魚介から肉まで、それぞれに異なる持ち味を備えた食材が並びます。ぶり、金目鯛、香住ガニ、合鴨、黒毛和牛。甘みや脂、香り、身質を見極め、それぞれの持ち味を生かす出汁と食べ方で仕立てています。

■ぶり

料亭のぶりの出汁しゃぶ

脂ののったぶりを香り高い特製出汁にさっとくぐらせる、京都発祥のぶりしゃぶ。九条ねぎと香りぽん酢を添え、ぶりの濃厚な旨みを引き立てます。

■金目鯛

金目鯛の出汁しゃぶ

国産金目鯛を、あおさ香る出汁にさっとくぐらせて。とろけるような甘みと磯の風味に、葱油の香ばしさと香りぽん酢の爽やかさが重なります。

■カニ

[兵庫県産]香住ガニの出汁しゃぶ

特製出汁にさっとくぐらせれば、香住ガニ(かすみがに)のみずみずしい身の甘みが際立ち、特製カニ味噌が豊かなコクを添えます。

■合鴨

合鴨と葱の出汁しゃぶ

肉厚でやわらかな合鴨を、昆布と鰹節の特製出汁で味わう鴨しゃぶ。九条ねぎと白葱を添え、鴨の旨みが溶け込んだ出汁は、〆の特製そばまで愉しめます。

■黒毛和牛

[熊本県産]天草黒牛と雲丹の出汁しゃぶ

天草黒牛の良質な赤身とほどよい脂を、国産ウニと白味噌を合わせた特製出汁で味わいます。追いウニで旨みを重ね、〆はリゾット風に。


同じ出汁しゃぶでも、食材によって、立ちのぼる香りも、食べ進めるほどに深まる味わいも異なります。魚介を味わいたい日、肉の旨みをじっくり愉しみたい日。食卓を囲む方や過ごしたい時間を思い浮かべながら、ひと鍋を選ぶ。料亭の鍋の愉しみは、食卓に並ぶ前から始まっています。

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鍋を囲む、あたたかな時間

鍋から立ちのぼる湯気や、出汁の香り。食材が煮えるのを待ちながら、同じ鍋へ箸を伸ばすひととき。鍋料理には、おいしさとともに、食卓を囲む時間そのものを豊かにする魅力があります。

いつもの食卓を少し豊かにしたい日にも、大切な方とゆっくり過ごしたい日にも。

下鴨茶寮の鍋は、蓋を開け、食材を鍋に入れ、味わいが深まっていく、そのひとときまでを思い描いて仕立てています。

ご自宅で愉しむひと鍋としてはもちろん、大切な方への贈りものにも。おいしいものを届けることが、その先にあるあたたかな時間へとつながっていく。そんなひとときとともに、料亭の味をお愉しみください。

参考

京都市の伝統産業「京料理」
https://densan.kyoto/industry/kyo-ryori/
農林水産省「伝統と風土が磨き上げる京の食文化」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/area/kyoto.html
農林水産省 うちの郷土料理「関西地方 京都府」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/kyoto.html

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